これ、なんだかわかりますか?
大きさは長手方向でだいたい35mm。厚みは約0.7mm。ステンレス製です。
そうですね、ゼムクリップぐらいの大きさといえばわかりやすいでしょうか、
正解は、「イジェクトピン」
・・・・って何? っておもいますね。失礼。これは、iPhoneのSIMカード(携帯電話の
電話番号を特定する情報などが入っている)を取り出すときにカードを押し出すのに使う
「突っつき棒」です。iPhoneには、小さな穴が開いていて、そこにこの棒をぐいっと
押し込むと、トレーと一緒にカードが押し出されてきます。
パソコン歴の長い人にはなじみがあるかもしれませんが、その昔はMOとかフロッピー
ディスクとかのトレーが出てこなくなったときにもわりと普通にこの方式で押し出していました。
とはいえ、あのころ僕らはたいていそのへんにあるゼムクリップの一部を「うりゃ!」と伸ばし、
こんな形にしてよく使っていました。
しかし、原理は一緒でもiPhoneの付属品はセレブです!なんという美しさでしょう!
ステンレス製(磁石にくっつくからたぶん400番台)の板材から抜いたものと思われますが、
断面がほとんど直角に出ていて平滑なことから、おそらくはレーザー加工で抜いたものだと思います。
よく見るとエッジは円く削られていて内側の側面ですら特定方向の加工跡が見えないので、バレル研磨
(砥石のような粒子と一緒に円筒形の容器に入れて回転させ、表面を磨く)されてます。
凸部分の先端だけは、あきらかにカドのアールが柔らかくとられているので、ここだけは手作業で
研磨したと思われます
その上で、上下の面は、傷一つ、指紋一つ無い鏡のようにピッカピカの状態で台紙に固定されていますから、
両面とも、iPodの鏡面と同じく、バフ仕上げ(柔らかい布でできたツールで磨く)されてるのでしょう。
これは本体を買ったときと、別の携帯に乗り換える時にだけ使う道具で、細めのゼムクリップでも充分代用できます。
そんな付属品ですが、これは紛れもなく単体で製品として成立しうる品質を持った「専用工具」です。
しかも、驚いたことに、そのたった0.7mmほどの板の側面には、
これまたレーザー彫刻と思われる加工で「CHINA」の刻印。文字の高さは、0.5mm程度。
Appleのロゴですらない、単なる生産国表示!それを極小文字でレーザー刻印するこの執念は
どこから来るのでしょうか、ユーザーのほとんどが一度も使うことすらなく、その存在にすら
気付かないようなこの付属品にそこまでするAppleのモノづくりに、打ちのめされます。
そう思ってよく見ると、このiPhoneには、パッケージやその中の補助的な梱包部材ですら、
ユーザーの目に触れる部分にただの一つも既製品が使われていません。イヤホンなどを
巻いてあるフィルムですら専用にデザインされていて、白い文字が印刷されています。
ここまでして、Appleはユーザーにこの製品を手に取ることのプライドをもたせてくれるんだと!
久々にプロダクトから作り手を強く感じで脳が痺れました。
これはほとんど、呪いに近い(笑)。
このようなこだわりの継続が、他社製品と比べて、
未だ大きなアドバンテージを保っている要因なんでしょうね。
興味深いエントリー、ありがとうございました。m(_ _)m
ありがとうございます。
ちなみに、前回のiPhone3G にも、同様のものが付属していたのですが、そっちは、KOREA の文字、カタチは全く同じなのですが、こちらは、本体の素材からして異なるようで、質感が全然違います。目に見えるところからだけでも、深読みし始めると、きりがありませんです。深いなあ。